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四月十二日
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    先週借りた、私の好きな人が好きだと言っていたバンドのCDと「海の生き物図鑑」を返却するべく、近所のスーパーに隣接するレンタル屋へ行く(私はそのスーパーに隣接するレンタル屋に恩義を感じているので他の店や、ユイコさんのマンションに隣接するレンタル屋でCDを借りる気にはなれなかった)。
    今日は、逆三角形のボディを持つ店長(推定年齢三十二歳)は居らず、バイト君がひとりでぽつんと店番をしている。なかなかにかわいらしいバイト君に、
    「彼女とか、いないの?」
    なんて下世話な質問を年増らしくぶつけてみるが、
    「はぁ、あいにく彼女の貸し出しは、ウチ、やってないんで」
    なんて間の抜けた返答を返されてしまう。
    もぅ、違うんだってば。
    それで、もうすっかり萎えてしまった私はうっかり、レジ横にあったローラースケートを借りてしまう。そのローラースケートは逆三角形のボディを持つ店長(推定年齢三十二歳)が若かりし頃に楽しんだものらしく、色んなものがくっついている。例えば彼が初めての恋に破れた日に舞っていた落ち葉。例えば彼が初めて「海開き」という言葉を知った日に咲いていたひまわり。例えば彼がこのレンタル屋をやろうと決意した日の朝に降りていた霜など。
    この年でひまわりは流石に若干照れてしまうので、ひまわりだけは外してくれないか?と、バイト君にお願いするが断られてしまう。
    「逆三角形のボディを持つ店長(推定年齢三十二歳)が『それだけはダメだ』って、前にそれを借りていった人にもキツく言ってたんで。はぁ」
    それで今、私の部屋にはひまわりがあり、あたりにひまわりのにおいが立ちこめている。
    ローラースケートをする予定は今のところないが、そのひまわりのにおいを嗅ぎ嗅ぎ眠りに落ちると、ちょっとエッチな、いい夢を見れたので良かった。

    |21:24| - | - | - | posted by キャル - -
    四月十一日
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      日増しに暖かくなっていく毎日の中で、私の持つ家庭菜園の野菜もぐんぐん育っていく。
      特にエンドウ豆の花の咲き方は秀逸で、近所に住む、本屋を営む叔父からも「こんなに妖精がたかっているエンドウ豆の花の咲き方は見たことがない」とのお墨付きをもらったほどだ。
      今まで妖精に感心を示したことはなかったが、本屋を営む叔父にそう言われるとさすがの私も気になってくる。しかしひとりでエンドウ豆の花にたかる妖精達をよおく見るのはなかなかに勇気がいるので、私の好きな人に頼んで一緒に見てもらう。
      私の好きな人は「えぇー。妖精ぃ?いいよぉ。俺、妖精の女の子もだぁいすき」と、私に当てつけを言いながらやってきた。
      妖精達は、なるほど、一昨年の夏に養蜂所で見た蜂蜜採取のための箱に群がる蜂のごとくぶんぶんと、私が育てたエンドウ豆の花にたかっている。
      「ねぇねぇ、これってぇ、あまい?食べられるのぉ?」
      相変わらず実のない話を実のない話し方で聞いてくる私の好きな人にときめきつつ、妖精をよおく見てみると、大半が中年男性の容貌をしていることに気づく。
      「なぁにこれぇ?俺、親父連中には興味ないんだぁ。ごめんねぇ」
      そう言って私の好きな人は携帯電話を意味なくぱかぱかと開けたり閉めたりしながらさっさと帰って行ってしまった。
      デートの口実にもならない妖精が、ぶんぶんと私が育てたエンドウ豆の花にたかっているのをよおく見ていても何も面白いことはない。それで私は、持ってきた虫かごに中年男性の容貌をしている妖精達を詰め込んでいく。親父達は(もう、私は彼らを「妖精達」と呼ぶことすらしたくなかった)ぴいぴい鳴いて抵抗していたがそんなのちっとも構わない。
      帰り道にユイコさんの家に寄り、一緒に食べたら思いがけず甘かったので私の好きな人に、
      「あまかったよ。そして食べられたよ」
      と、当てつけのメールを送信しておいた。
      |22:24| - | - | - | posted by キャル - -
      四月十日
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        ユイコさんが「いいもの手に入れたんだ」と伝書鳩を使って知らせてきたのでお土産に濡れ煎餅を持っていそいそと出掛ける。私とユイコさんは「伝書鳩友の会」で知り合ったので、まぁ、まどろっこしいながらもいつもこの方法で連絡を取り合っている。
        ユイコさんの伝書鳩、さざ波三号をバスケットに入れ、いざ玄関の扉を開けようとすると、同じタイミングで息子のリンリンが訪ねてきた。「伝書鳩が…」と、しどろもどろな私を差し置いてリンリンは、「分かった。でも僕も一緒に行くからね」そう言いながらサッとさざ波三号が入ったバスケットを持ってくれる。こういう時だ、私が「息子がいて良かったなぁ」と思うのは。
        さてユイコさんの手に入れたいいもの、とは伝書蜂で、ユイコさんの伝書好きにはほとほと頭が下がる。「ただ蜂ってさ、鳩に比べてかなり小さいじゃない?だから付ける手紙の文字も相当小さくないとだめなのよ」なるほど、その伝書蜂は昆虫なだけあってずいぶんと小さい。「だからさ、米粒に文字を書けるような技術習得のためにちょっと中国に行ってくる」
        米粒に文字を書けるような技術習得のために中国に行くなんて、とってもアナログな気がしたがそれは指摘しないでおく。ユイコさんは心底デジタル思考だから、ユイコさんの行動をアナログと呼ぶのは自殺行為なのだ。
        でもそんなことなど露ほども知らないリンリンがうっかり「米粒に文字を書けるような技術習得のために中国に行くなんて、とってもアナ…」と言いかけたので慌ててその口に持ってきた濡れ煎餅を袋ごとつっこむ。
        「ユイコさん、その伝書蜂、とってもすてきねぇ、中国土産に私、パンダちゃんのぬいぐるみが欲しいわぁ。それじゃあまたねぇ」と、濡れ煎餅を袋ごと口につっこまれたリンリンを引きずりながらどうにかこうにか帰ってきた。
        |01:23| - | - | - | posted by キャル - -
        四月九日
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          恐ろしいほどの激しい雨。
          十七時三十九分。
          いつもより三分早くコウモリが飛び交い始める。
          |19:17| - | - | - | posted by キャル - -
          四月八日
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            ものすごいリラックス感に襲われた。
            はじめはものすごいリラックス感に支配されまいと必死で抵抗していた私だったが、ものすごいリラックス感の力があまりにも強いので、ものすごいリラックス感のしたいようにさせた。ものすごいリラックス感は、私が抵抗するのをやめたことを認めると、急に優しい顔になって「ごめんね。ごめんね」と言いながら私の髪をやさしくなで始めた。もしかしたら少し泣いていたかもしれない。それで「泣いているの?」と聞いたのだったがそれがいけなかった。ものすごいリラックス感はまた雄々しい顔を取り戻し、再び私を襲おうとした。今度は私も抵抗をやめなかったので、ふたりして少し流血してしまった。
            でもまぁそれも悪くなかったので、こんどものすごいリラックス感に襲われた時は少し流血する程度に抵抗することにしようと思う。
            |11:05| - | - | - | posted by キャル - -
            四月七日
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              三ヶ月遅い七草がゆをおやつに嫌々食べているともうすぐ十五歳になる息子のリンリンがやってきて私をミドリガメのレースへと誘う(私は十五年前に息子を生んだ覚えなどないのだが、リンリンが自分は私の息子だと言い張るのでそうなんだろう。お煎餅を食べるときにミルクがないとしっくりこないところや、ぞうすいやおかゆなどといった濡れたご飯を嫌うところなどが私に酷似していたためリンリンを自分の息子だと認めることにした。私は食の嗜好が表す人間性に絶大な信頼をよせているのだ)。
              近所の幼稚園の園庭を借りて行われるミドリガメのレースは大変華やかなもので、パンジーやシロツメグサ、スミレやシラー・カンパニュラタなんかの春の花を甲羅につけた小さなミドリガメたちが、なるほどレースに出ておられる。
              ミドリガメ達は、みな目の後ろ、耳のあたりが赤い(オレンジ)。今度好きな人に会いに行く時には、ああいう風なメイクで行こうかしらんと一瞬思うが、私の気持ちを見透かした息子のリンリンに「絶対にやめておいたほうがいい」と言われてしまう。絶対なんて言葉、あんまり軽々しく使うもんじゃないわよ、と、母親っぽいことを言いかけるが逆に「あっ。レースが始まるよ」と言われたことに気をとられて母親っぽいことを言いそびれる。
              まぁ、そんなことじゃないかと思っていたがミドリガメのレースはとにかく時間がかかる。いや、カメの足が遅いから、ではなく、大会委員長の話がとにかく長いのだ。
              「どうもぉ」と、身をくねらせながら出てきた大会委員長は私の好きな人だった。それで私は一瞬で色めきだったのだが、周りの大人達はみな「あー」と諦めの声をあげたのち、それぞれ持ってきたゴザを引いてお弁当の時間にし出した。
              はじめ私は「この人の話を聞かないなんて信じられない」と、手を胸の前で組んで私の好きな人の話を熱心に聞いていたのだが、さすがに十八時間を過ぎた頃にお腹が空き始めたので、リンリンが用意してくれたおはぎをほおばることにした。
              そのころにはすっかりミドリガメ達も全員ゴールテープを切り、甲羅につけたパンジーやシロツメグサ、スミレやシラー・カンパニュラタなんかの春の花もしおれ、夜も明けていたので、みんな三々五々仕事に出掛けたり、学校に向かったりし始めた。
              登園してきた園児たちが、嬉々として話続ける私の好きな人のことをじゃまそうに見ていたあのまなざしが忘れられない。
              |09:19| - | - | - | posted by キャル - -
              四月六日
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                私の好きな人が好きだと言っていたバンドのCDをレンタルしに、近所のスーパーに隣接するレンタル屋へCDを借りに行く(私はそのスーパーに隣接するレンタル屋に恩義を感じているので他の店や、ユイコさんのマンションに隣接するレンタル屋でCDを借りる気にはなれなかった)。
                私の好きな人が好きだと言っていたそのバンドの名前は初めて耳にするカタカナの名前で、私はそのバンドのCDを借りようにも、そのバンドが邦楽のものなのか洋楽のものなのかも分からず、その情けなさに思わず店頭で涙ぐみそうになった。
                するとそんな私の様子に気づいた逆三角形のボディを持つ店長(推定年齢三十二歳)が「では、こちらをレンタルされてはいかがですか?」と熱心に「海の生き物図鑑」を薦めてくる。このレンタル屋はただの「レンタル屋」で、決して「CDレンタル屋」ではない。貸せそうなものはあらかた貸し出し用に店頭に並んでいるのだ。
                涙ぐみながらもなんとか私の好きな人が好きだと言っていたバンドのCDを見つけ出して借りることができたが、何せ私はこのレンタル屋に恩義を感じているので、逆三角形のボディを持つ店長(推定年齢三十二歳)おすすめの「海の生き物図鑑」も借りて帰る。
                夜、私の好きな人が好きだと言っていたバンドのCDを聞きながら「海の生き物図鑑」を眺めつつ眠りに落ちると、ちょっとエッチな、いい夢を見れたので良かった。
                |22:59| - | - | - | posted by キャル - -
                四月五日
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                  電車の中で急に腕を掴まれた気がしたので振り返るがだれもいない。近頃流行の疾患か…診察券はどこにしまったっけ?そう想いを巡らせているともう一度、誰かに腕を掴まれた。今度ははっきりと実体がある。
                  「ねぇ、びっくりした?」
                  細身のスーツにえんじ色のネクタイを締めた相当私好みの顔をした男がそう聞いてくる。
                  「はぁ…まぁ…」
                  びっくりしたやら相当好みだったやらで私が曖昧に突っ立っていると男はおもむろに、
                  「今から自転車に乗りに行こうか」
                  と誘ってくる。
                  相当好みの顔をした男にそう誘われて一も二もなくついて行くことは光の速さで決定していたが、以前ユイコさんから「あんたはじらすってことを覚えないとダメ」と諫められたことを思い出し「どうしようかな」と言ってみる。すると男は「あ、そう。じゃあいいや」と言ったかと思うと光の速さで隣の車両へ飛んでいってしまった。
                  家に帰り風呂場に籠もり、泣きながらユイコさんへ不幸の手紙を8通したためる。
                  |22:57| - | - | - | posted by キャル - -
                  四月四日
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                    四月なのに雪?と思って見上げると、桜の花びらがざわざわと舞い落ちているだけだった。
                    舞い落ちる桜に混じって私の好きな人も舞い落ちて来たので驚いてしまう。
                    昨日近所のスーパーに隣接するブティックで新しい春用のワンピースを買ったのに(私はそのスーパーに隣接するブティックに恩義を感じているので他の店や、ユイコさんのマンションに隣接するブティックでワンピースを買う気にはなれなかった)今日はデニムパンツにさえないカーディガン姿の私は、さえないカーディガンを好きな人に見られる前に、公園のリスの滑り台の後ろにさっと隠れてしまった。
                    私の好きな人は、相変わらずのうさんくささで舞い落ち続けている。一見頼りなさげに見える私の好きな人は、その実、結構なしたたか者で、今日も何人かの女の子に愛を告白されては「えー、うそぉ?ほんとにぃ?俺、ちっとも気づかなかったよぉ」などとうそぶいては身をくねらせているのだった。
                    いつか私もあの台詞を聞くことになるかもしれないけれど、だからって心の準備も何も出来ていないこんな春の日にむざむざそれを聞きに行く気にはなれなかったので、リスの滑り台を上手く使って、私の好きな人から私のさえないカーディガンが死角になるようにして公園を後にすると、手頃な石を家の前まで蹴りつつ蹴りつつ帰ってきた。
                    |22:57| - | - | - | posted by キャル - -
                    四月三日
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                      ベッドの脇に使用済みのティッシュが落ちている…と思ったらそれはひからびたただの龍だった。
                      ひからびた龍はやたら軽い。それならば最初に思ったティッシュのように扱ったとしても何も問題は無いだろうと思い屑籠にそっと捨てた。
                      ところで「屑籠」という文字の中には龍がいる。
                      そのこととは何も関係はないけれど、屑籠の中の龍が気になって仕方がない。気になったものを放っておいたままでいつも通りに過ごすことができないのが私の質だ。
                      それでその龍を「屑籠」から拾い上げ、隣町に住むユイコさんのところまで持っていく。
                      「ユイコさん、龍が私の家に落ちてたんだけど」
                      「そう。あんたみたいな生き方をしてたらいつか家に龍が落ちるようなことになると思ってた」
                      私みたいな生き方って?なぜか威張っているユイコさんに威圧されて口の中で小さく反論するがユイコさんはそれには答えずに、
                      「低脂肪乳を買ってきなさい」
                      と言う。
                      それにも反論できない私が自宅近くのスーパーまで戻って低脂肪乳を買ってくると(私はそのスーパーに恩義を感じているので他の店や、ユイコさんのマンション近くのコンビニで低脂肪乳を買う気にはなれなかった)それをユイコさんは、ユイコさんが飼っているマグマと言う名のオウムの水入れに注ぐ。
                      マグマは最初、自分の水入れに低脂肪乳を注がれたことに腹を立てて「グェグェ」と聞くに堪えないダミ声で鳴いていたがやがてそれも無駄だと悟ると急におとなしくなった。
                      「マグマの許可がおりたから」
                      ユイコさんはそう言うとその低脂肪乳の中にひからびた龍を入れる。
                      低脂肪乳に入れた途端急に龍がふくらんでいきなり大きな白龍にでもなるのかと期待に胸をふくらませたが、ひからびた龍は低脂肪乳にふよふよと漂うばかりで意外に何も起こらない。
                      「ユイコさん」
                      「しっ」
                      いいからいいから。こっちこっち。新しい紅茶を買ったから飲みましょう。あつあつのやつ、煎れたげる。
                      今日のユイコさんには逆らいがたい何かがあって、私は言われたままユイコさんが煎れてくれた紅茶を飲む。
                      紅茶を飲みながら夕方のニュースなんかを見るともなく見ていると、龍のことはおろか、「屑籠」の中に龍がいることすら忘れてしまう。
                      急にマグマが、さっきよりよっぽど静かに「グェ」と鳴いたことにはっと我に返るとユイコさんがさっきよりよっぽど静かに「しっ」と言うのでゆっくりマグマの水入れを見るとそこには龍はもうおらず、もう一度静かに「グェ」と鳴いたマグマの視線を追ってみると、ひからびた龍がひからびたまま、開け放たれた窓のサッシをよじ登り、外へとのそのそと逃げていくところだった。
                      |22:56| - | - | - | posted by キャル - -
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