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四月十三日
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    「伝書鳩友の会」の会合の後、サワキさんというおじさん?おじいさんと一緒に帰った。
    いつも会合の後はユイコさんとお茶をして帰るのだが、なんせユイコさんは今、米粒に文字を書けるような技術習得のために中国に行っているので、私とお茶はできない。
    サワキさんは早くに奥さんを亡くし、自身も定年退職後の時間をもてあましているので「夕食でもどうですか?」と私を誘ってくる。私は以前より、この、一つも伝書鳩に興味がなさそうなのに会合は休まずきっちり出席するサワキさんに興味を抱いていたので(そしてなにより「私がおごりますから」という言葉にのせられて)、お誘いを受けることにした。
    「私ね、じつは伝書鳩はおろか、普通の鳩すら飼っていないんですよ」
    サワキさんは、店の女将さんが出してくれた黒糖焼酎を舐め舐めそう告白してきた。
    「伝書鳩なんて存在もね、会に入ってから知ったくらいでね」
    じゃあなんのための入会なんですか。そう聞くのもためらわれるほど恥じ入っているサワキさんに私はなにも言えず、店の女将さんに梅酒お湯割りのおかわりを頼む。
    「時に、バリはどうですか?」
    「バリ?」
    「そうです。バリ」
    バリはどうかと聞かれても、私はバリにはあかるくない…って、この会話、デジャヴじゃない。この人は、
    「ここより寒いところに行ったんじゃないの?」
    「…バレましたか」
    「バレますよぉ。バリの話なんて、そうそう振られる話題じゃないですから」
    「そうですよね」
    「そうですよ」
    本当のサワキさんはどこですか?本当のサワキさんはもう亡くなってます。そうですか。はい、大往生でした。それでタイミングが良かったので、サワキさんの身体をお借りして、初めて味わう春を満喫しているのです。
    「初めて味わう春…」
    「はい。初めての」
    そう愛おしそうに言われると、私はもう元雪男(現サワキさん)を責める気にはなれなくて、いつまでもいつまでも元雪男(現サワキさん)の隣で梅酒お湯割りのおかわりをし続けた。
    |00:01| - | - | - | posted by キャル - -
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